「行きたいのに行っていな〜い」ところは未だ全国各地にある。
京都府の奥座敷、美山町もそのひとつだった。
山陰本線、日吉駅から町営バスを乗り継いで、
「かやぶきの里」で知られる美山町・北村という集落に辿り着く。
38棟のかやぶき集落は、岐阜の荻町、福島の大内宿に次ぎ、
全国3位を数えて、国の「重要伝統的建造物群保存地区」という、
"目で読めても舌がもつれる"漢字だらけの冠が付いていた。
一面にひろがる田んぼの中、さて案山子は?といえば、
1体とて見つからない。複数のサイトで見ているので、あれれ?
と思い、お店で美山牛乳を喉に放り込みながら尋ねると、
「あれは写真用のリクエストで、立てただけですよ」と仰る。
本末転倒である。「かやぶき屋根の村に案山子」というイメージを
勝手に抱いてやってきた自分をなじるしかない。
早々に北村にいとまを告げて、往路で見た「道の駅」安掛に戻って、
田んぼの路肩や道路際に行儀よく並ぶ案山子にレンズを向ける。
観光客用にしては、よくある「カカシ祭り」の風体でなく、
田んぼの案山子風に出来てはいるが、ココロときめくはずもない。
ぜいたくは言えない。日本全体で田んぼの案山子を見つけるのは、
容易ではないご時世なのだ。案山子に魅了されて、
10年以上探訪するも、年々歳々、発見が困難になっている。
絶滅の危惧にある種と言っても、もはや過言ではない。
「日本の原風景 かやぶきの里 美山」なる観光フレーズで
市町村興しを計る地にとっても、山田の中の一本足の案山子は、
もはや幻想に等しい。それほど民草の意識から霧散しているのだ。
それを確かめられただけでも、はるばる訪ねた戦果としよう。
"案山子博物館"を訪ねたわけでもなし、土と風の匂いの中に
心地よさげに立っていた案山子に会えただけでも、よしとしよう。
さもないと、こき使われ、引きずり回された、
草臥れた我がカメラ機材に、申し訳の"も"の字も立たない。
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★案山子の写真160体が載っています!
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