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“高原鉄道”の愛称でファンも多い「小海線」。
海から一番遠く、標高日本一を競う駅が
連なって流浪人には玉手箱のような路線だ。
春の桜、秋の案山子でお世話になって久しく、
溜まったココロの澱にエキスを頂いている。
メディアに出演するユーメイで風光明媚な
ブランド桜よりも、その土地ならではの
在所の芳香を野良犬が嗅ぐように感知できる
桜、とでも言えばいいだろうか。年々歳々、
そんな桜花が萎えゆく心の琴線を揺さぶる
ようになって、まさに小海線の桜たちが
そのひとつを担っている、と言っておこう。
東小諸、乙女、、、佐久平、岩村田、北中込、
中込、龍岡城…車窓からの桜景色だけでも、
眼と心が洗われる。高原に降り注ぐ柔らかな
陽射しに微睡んでいると、春霞の向こうに、
桜たちが午睡する眼を射る。此処って何処?
私って誰?の感覚に陥って、慌ててドア・
ボタンを押している輩。メランコリーな春。
そうそう、去年の春は1つ前の龍岡城で下車、
五稜郭の桜をテクテク訪ねたっけ~の思い
に耽けつゝ、乗り越してしまった臼田に戻る。
稲荷山公園のコスモタワーが桜名所デス!
と手元の案内人は示すが、道すがらの民家に
点在する桜たちが我が花眼を捉えて放さぬ。
信州・佐久は臼田の名も無き桜たち。かくも
麗しき桜木のたもとで添い寝したくなった。
危うく家々に頼み込みたくなるも、さぞかし、
かくも不恰好の流浪人では門前払い!を喰らう
どころか、110番をされるのがオチだろう。
自ら翻意、瞼に焼き付けてスゴスゴと後にした。
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