2013/06/14

二宮金次郎の銅像を心に抱きしめて

 ふと銅像に関心を持ったのは、今生きている人の数よりも、
昔生きていた人の数の方が圧倒的に多い! と気づいたからである。
 
 列島を股旅する行き先々で多さまざまな銅像に出くわすが、
とりわけ二宮金次郎には昼行灯もジーンとくる。
ごく最近も、三陸の小学校・仮設住宅の軒先で出合った。
 
 よく「人は人に学べ」と言うが、ならば今ある交友関係を
やたらに広げて首が回らなくなるより、先人、つまり辞世の人に
触れる方が安上がりで薫陶にもなる、の発想である。
それも偉人伝などの本でなく、公共の場で出し抜けにヌッと出会える
手っ取り早さと異次元の触覚が、何としても銅像のよさなのだ。
 
 いま金次郎の伝記をひもとけば、節倹、殖産、町おこし、
実行主義、そして六百数十村を復興したという。
ふと、この国を覆う行き詰まり感と有様に目を遣れば、
自分以外のことにはまるで無意識の世相であり時代である。

 本ならぬスマホや携帯を歩きながら見るご時勢を、
天上の金次郎が知ったら何を思うだろうか?
ながら本読みならずも、金次郎精神の継承は望むべくもあらずか。
 
 そんな抗いがたい気分の日々でいると、
海外で篤志により金次郎像が建立されているという。
米国・ロサンゼルスのリトルトーキョー、ブラジル・サンパウロ…。
移民や渡来した日系人の遠い心の故郷であり、
日本人としてアイデンティティー、と察するに胸が熱くなる。

 それはそうと、アメリカによる時の占領下時代に、
連合軍は二宮金次郎を「日本が生んだ最大の民主主義者」
と称して圧倒的な評価をしていたという。
1946 (昭和21)から58年までの間、
日本銀行発行の1円札の肖像が二宮尊徳だった、
という歴史を、今もってかみしめたいと思う。



  



















☆ピート小林と歩くこころの日本遺産「二宮金次郎」
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(日刊スポーツ・アーカイブ)
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