因幡の案山子写真館のおもてなし

そぼ降る雨の中、寝不足の眠い目をこすって、

羊が1匹、2匹...もとい案山子が1体、2体...と数えてたら、

目も醒めるような美白のおばあちゃま？が、

この朴念仁に、頬笑みを投げて手招きしておられる。

ン度目の成人式を迎えられた因幡の白兎！ご婦人。

さぞ麗しい人生行路を歩まれ、今では案山子になられて、

ご自身のお若りしころの御姿を背景写真で、

魅せてくださる設えに、ダブルで感じ入ってしまった。

ウインドーに目を泳がすと、正装の人間が、

案山子の姿になって、記念撮影にイソイソと臨んでいる。

ガラス越しに目をしばたいていると、

店主が現れて、裏手のスタジオをご案内くださり、

案山子をつくられた奥方が迎えてくださる。

飛び入りのカカシスト、いや案山子ストーカー、

見るだけでなく撮るしかない。いそいそとズタ袋から、

安モノ銀塩一眼を取り出して、激写させていただく。

すわっ、案山子の写真館！？と思いきや、

案山子愛にあふれた、それは立派な町の写真館。

しばたいていた目は直ちに丸くなっていた。

さすがは「世界かかしサミット」の因幡国・八頭、

さりげなく町角に棲息する案山子たち。

サプライズに満ちた飛び切りのおもてなしよ。

ほんのもう2~3分でも下僕に余裕があったなら、

きっと案山子の麗しいお話を伺えたのに・・・

人生はいつだって、ちょっと時間がないのだ。

思いもせぬ僥倖と後ろ髪と...ほど近い駅までの道すがら、

地元児童の描いた「かかしMAP」が目に沁み入って、

因幡の白兎ならぬ、因幡の案山子と唱えていた。

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「ピート小林と歩く こころの日本遺産・案山子」
(日刊スポーツ・アーカイブ)

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