つい先ごろまで、暑~~い!と宣っていたのに、
潮が引く如く酷暑が去ると、夏がいとおしくなる。
この未練がましさに失笑しつゝ、夏のシッポを
捉まえたくなったのか、湘南と外房を行き来する。
まんず焦点を定めないと茫洋とするタチなので、
湘南は大磯、房総は御宿に!と根拠もなく定めた。
【その壱:大磯】
“湘南発祥の地”と、まことしやかに伝わる大磯。
今まで縁もゆかりもない遠い存在であったが、
モノのはずみでこの夏、重ねて訪ねることになる。
お初は――過日、小田原で作家・川崎長太郎の
縁を見つけ損ねるや、なぜか大磯駅に降り立って
五里霧中で西方に歩いた。ほどなく漆黒の夕闇。
そして再び――徒労の挽回にと晩夏の昼下がり、
観光案内所に飛び込んでマップを頂戴するや、
一目散に海を望む砂浜に駆けつける。ユーメイな
大磯プリンスとか何たらビーチやらとは真逆の
海辺の様相。ばってん、私にはおあつらえ向きだ。
『日の名残り』(カズオ・イシグロ)ではないが、
夏の名残りをいと惜しむのには絶好のスポットで、
係留された物体が、そこかしこで景色をつくる。
目を射った川崎長太郎風のトタン小屋に棲息する
誘いに駆られる僥倖。帰路、大磯レジャー客の
黄色い声が車内に響いて、ほどなく夜の帳が巷に。
_______________________________________________
_________________________________
フェイスブックでも投稿しています
https://www.facebook.com/petekobayashi
0 件のコメント:
コメントを投稿