この11年半、季節を問わず訪ねている
南三陸。いつもながら日帰り強行軍にて、
気仙沼からBRTを利用しての現地着は
ほどなく夕闇に包まれはじめる時間帯。
竣工した「南三陸311メモリアル」は
大震災の伝承ラーニング施設であり、
南三陸の新しい町づくりの集大成という。
有料ゾーンの閲覧は時間的に叶わず、
美術家クリスチャン・ボルタンスキーの
“MEMORIAL”作品は次の機会にする。
「中橋」と旧防災対策庁舎を眼下にして、
モアイ像の「南三陸さんさん商店街」に
戻ると、見慣れぬ幟がはためいている。
◎「隈研吾先生 すてきな建物ありがとう」
◎「祝 落成 隈研吾先生ありがとう」と
幟に大書きされていて、一瞬、ナニコレ?
と目を疑う。何と隈氏による施設の設計
への町民の感謝と歓びの顕わな表出なのだ。
公共的な性格で注目される建築物だけに、
微笑ましさを超えて“建築家のネーム”が
表出する唐突性と有り得ない乖離性に
失笑と落胆を禁じ得ず。にしても現象は、
建築家ご本人に届いているのだろうか。
◎寒風すさぶ暗闇の「野ざらしバス停」に
辿り着くと、凍えるごとく地にへたり込み、
煙草で暖をとるご婦人がおられる。上屋
設置の度重ねる陳情にも、首長は頑として
譲らずケンモホロロに黙殺されたと言う。
=宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町=
権力におもね弱者をないがしろにする
為政への暗澹たる思いだけが背筋に残った。
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