2022/10/09

オケラ?と稲穂の幸、信濃・姨捨の案山子

列島をアテもなく右往左往して、20年余、

なあに、案山子(かかし)を探してである。


そろそろ原点に戻るかな、とポイントを

信州は北アルプス・安曇野エリアに定めた。

松本をベースに大糸線で北上、篠ノ井線で

東進するもバッテン、か・か・案山子が

目を皿にして探すも、い・い・いない。


マイ・デンワカメラは…いなないている。

撫でたりなだめすかしつゝ、シンブンガミの

スポーツ面でも!と捲っていると、おや、

『ドロシーの夢を見ている捨案山子』なる

俳句がやんわりと目を射る。ん〜、田んぼ

だけじゃない!ありがとう——我に返り、

捨てられた案山子を漁ってアチコチの道端、

ゴミ捨て場へ目まで汗かきかきスタコラ。


戦果のほどは…言うまでもない。たゞ20年

越しの案山子撮影にオケラのままで帰れん!

滴る汗に奮い立ち、よっしゃ!と居直る。

「なあ~に天下の姨捨の案山子がある」と

全国に名を馳せる棚田・姨捨(おばすて)へ

スタコラと重い足を引きずって辿り着く。


高い空、降り注ぐ信州の陽射しがまばゆい。

目を下ろすと、ご夫人が赤子をあやしながら、

まどろんでいる。まるで信濃の国のおとぎ

話のよう。さっきまでの徒労がウソのように

消え去り、まどろみと平安の中に包まれた。


名月の里・姨捨でも案山子は見つからず。

不意に出逢った情景の高揚感に包まれながら、

ポッケの中、唯一の昼メシ用の握り飯を

棚田にそおっと置いて、瑞穂の国でかくも

平和に日々のご飯をいただける幸を想った。




































































































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『カカシバイブル』(東京書籍・2009年) 

全国の案山子、161体ほどが載っています


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