2014/02/10

言葉と視覚が紡ぐ震災の記憶「リアス・アーク美術館」①

3.11から35ヶ月、大量の映像・活字に接して、
また実際に現場を歩いてきているが、
ようやく胸にストンと落ちるものに出合った。

気仙沼「リアス・アーク美術館」の常設展示、
「東日本大震災の記録と津波の災害史」である。

自らも被災した同館の学芸員が、震災直後から
気仙沼と南三陸をくまなく歩いて撮影した
写真3万点、被災物250点、津波歴史資料などから、
約500点を展示したもので、被害の実態を仔細に記して、
かつ多様な視点からの表現が寄り添っている。

展示された203点の写真と被災物155点は、
報道という2次メディアを通してしか震災を見ていない、
言い換えれば"被災現場"を見ていない人は、
呆然として言葉を失うだろう。と同時に、
かけがえのない記憶のスイッチになるに違いない。












































特筆すべきは随所に添えられている言葉だ。
とくに「Keyword」という括りの解説に目を見張る。
震災後に流布されて私たちが鵜呑みに使ってきた言葉に対する、
今まで表出してこなかった被災地からの意見・異見である。

それは政治やマスメディアが無意識に(少なくとも私には見える)
使ってきた「絆」「ガレキ」「想定外」「未曾有」「復興」
をはじめ、「支援」「イベント」「被災者…自己犠牲」etcといった
言葉を照射したもので、粛然とした説得力で伝わってくる。

その1例。「瓦礫とは、瓦片と小石、また価値のない物、
つまらない物を意味する。被災地で「瓦礫」と呼ばれている物は、
瓦片や小石でもなければ、価値のないもの、つまらない物でもない...(中略)」
パネルが示すように「被災物」と表現してほしいと説く。




















さらには、現代社会は「災害」も「オリンピック」も同様に
イベントとして消費している。被災地からはそのように見える、
という極めて真っ当な異議申し立てにハタと膝を打つ。

3.11以来、訪ねてきた多くのミュージアムでは
「癒やし・安らぎ」をテーマにした展示を行っているように感じたが、
これほど真正面から震災を見つめた美術館があっただろうか。

"被災地"と呼ばれる以前を身をもって知っている被災者が、
震災・津波の破壊と喪失という事実に対峙して、
未来をきっちり見つめようとする厳粛な視線がここにある。



















◎リアス・アーク美術館
〒988-0171宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5
Tel 0226-24-1611
常設展示「東日本大震災の記録と津波の災害史」
http://www.riasark.com/html/tunami_saigaisi.html
午前9:30〜午後5時/休館:毎週月・火曜・祝日の翌日
交通:気仙沼駅前から宮城交通路線バス「鹿折金山線」で
約25分、「リアスアーク美術館」下車すぐ。
(開館時間中のバス便数は往路復路ともに3本)

*気仙沼までの公共交通機関
1.JRを利用:東北本線一ノ関駅から大船渡線で
 約1時間30分 (1日11便・1110円)
2.高速バスを利用:宮城交通・岩手県交通バスで
 仙台から気仙沼まで約2時間30分 (1日4便・1800円)

注:JR気仙沼駅や高速バスの停留所から
被災した気仙沼の港と市街地まで徒歩20〜60
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