2012/11/29

案山子ララバイ2012(Vol.7-1)埼玉県比企郡ときがわ町

彩の国・埼玉は、案山子の国。と勝手に呼んでいるが、
誰も賛同してくれず、ケゲンな顔をされるのがオチである。

関東地方では案山子が多く棲息する地なのだが、
中でもイチ押しは、ときがわ(都幾川)・越生エリア。
ある年、すっかり顔なじみになったバスの運転手さんに、
「山あいのパラグライダーの地に案山子がいるよ」
と耳にして、せっせと毎年通い続けている。

通い10年、ようやく1機のパラグライダーを、
気に入りの案山子の背後に捉えた。
ランディングの手前、拍手こそしなかったものの、
あたかも背中に眼があるごとく身を呈して、
しかも全身全霊で、舞い降りるのを歓迎している。

かのパラグライダーの眼にもきっと入ったに違いない、
フィニッシュはことのほか見事な芸であった。





















他所では決して見られない、芸術的と思える案山子たちは、
近隣で見つけたオーガニック・カフェ「ぽっぽの木」の
女主人と地域の子どもたちの手による作品。
ウスノロ与太者の出し抜けな訪問にも、温かく接してくださり、
毎年欠かさず、10体ほどの案山子をメルヘンチックな
ストーリーで紡いで、大人たちが少年少女のころ
等しく抱いた夢を、時空を超えて想い起させてくださる。

とりわけ今年は、"NO NUKES"を体現したもの、
衣服をまとわない原案山子の表現性に目が釘付けになった。




















































彩の国・埼玉の地の、彩り豊かな案山子たち。
アヴァンギャルドと呼びたい一体一体を舐めるように
見入っていると、いつしか陽が西に傾いていた。

*公共交通機関
JR八高線/東武東上線・越生駅から、
ときがわ町民バスで瀬戸下車、徒歩約10分
「ぽっぽの木」(週3日営業) Tel 0493-65-4978
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「ピート小林と歩くこころの日本遺産 案山子」  
(日刊スポーツ・アーカイブ)
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2012/11/26

案山子ララバイ2012(Vol.6-3)宮城県気仙沼市本吉町

ふと案山子らしき影を見たような気がした。
それは、かなりのスピードで走るバスの車窓からだった。

1週間後、あらためて同じバスに乗り込む。
気仙沼駅と柳津駅を結ぶ、JR気仙沼線の暫定運行・代行バス。
被災地という灰色の景色が気仙沼湾から続く中、
当てずっぽで下車した大谷海岸駅バス停から歩くこと、およそ30分。
収穫が終わった稲架(はざかけ)のかたわらで、
影だった物体が案山子として現れた瞬間、小躍りしてしまった。




























被災地の案山子は、それほどに発見が容易でない。
宮城県の山元町、岩手県の陸前高田に続いてようやく出合えた、
今シーズン3度目となる、かの地の案山子である。

案山子に護られたのだから、きっと美味しいお米になるよ。
シャッターを押す間、心の中でつぶやいていた。

*公共交通機関
JR大船渡線・気仙沼駅前から、柳津行き代行バスで約35分、
大谷海岸または小金沢下車。徒歩約30分。
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2012/11/22

鎮魂の町を歩く(vol.15-4) 修学旅行の構図

「修学旅行」といえば、いまや新幹線や飛行機の時代である。

「ひので」や「きぼう」といった専用列車が走った時代が
遥かな霞みの中、ふと「修学旅行」の名を冠した列車が目に入った。
どうやら神奈川と日光を結ぶ「修学旅行列車」らしい。




















さて、修学旅行で被災地を訪れる動きが出てきている。
岩手、宮城、福島の3県へのキャンセルが相次いだ
昨年とは違って、目を向ける学校が少し増えているという。

少ない日数であっても、生徒が自分の目で被災地を見て、
何かを考える"きっかけ"になればと思いきや、
残念なことに、こうした学校はまだ少数派の域だという。

保護者らが安全性に懸念を示しているとかで、
東北への修学旅行は震災前の数字には回復しておらず、
その中心は、なんとスキー旅行だという。
待てよ、修学とは、「学びを修める」ことでなかったか。
"修学"が飛んで、"旅行"に化けてしまう、本末転倒。

旅行会社の"おいしい企画"に踊らされ、乗せられて、
高額!の代金をみすみす払わされいる構図は、
まったく変わらないどころか、むしろ加速している。

「かわいい子には旅をさせろ」って言うが、
意を異にした、自立しない親。自立しない子...
そして「過保護の国」日本である。





















ひるがって、日の光「日光」を見る修学旅行。
日本の光。列車に手を振りながら、そんな思いが巡った。
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2012/11/21

鎮魂の町を歩く(vol.15-3) 茨城県湊線・大洗鹿島線

茨城県南部・被災沿岸への公共交通機関は、
「ひたちなか海浜鉄道・湊線」と「鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線」の、
ローカル線である。「がんばっぺ茨城!」の合い言葉のごとく、
どちらも存続の危機を乗り越えて、頑張っている路線、
少しでも乗ることが応援になるので、出来るだけ利用している。

有り難いことに、春・秋の土休日限定ながら「ときわ路パス」という、
茨城県内のJRと地方路線が低料金*で一日乗り放題の
格安切符があり、今年の秋のバージョンは12月2日まで有効。

「忘れられた被災地・茨城県」という形容があるほど、
茨城県内の被害は、震災直後からほとんど報道されてきていない。

小春日和の一日、のんびり列車に揺られて、
那珂湊、阿字ケ浦、大洗、鉾田...と気の向くまま巡るのもいい。
震災から1年8カ月、決して癒えていない爪痕は、
忘れがちな大切な何かを、静かに問いかけてくれるに違いない。










































*「ときわ路パス」1日間有効
大人 2,000円 子ども 500円
大人の休日倶楽部会員 1500円
http://p.tl/kSXy

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2012/11/20

鎮魂の町を歩く(vol.15-2) 茨城県ひたちなか市阿字ケ浦

かつては遠浅の美しい砂浜で「東洋のナポリ」と称され、
300万人もが訪れて、関東一の海水浴場だったという阿字ヶ浦。
そんな栄華をよすがを物語る「海の家」の内部は
今も放置されたままで、平穏無事であった夏が偲ばれる。

そんな阿字ケ浦海水浴場は、13年前に設けられた沖防堤で、
奇しくもエアポケット的に津波の被害は免れたが、
福島第一原発事故による放射能汚染水で客足は途絶えて、
近年賑わっていた学生サークルの合宿も壊滅という。

地震による被害の改修をしたところで、
もし原発事故が収束しても、客足もすぐには戻るはずもなく、
東電や国による補償が得られなければ、町が消えてしまう。































少年時代、たった一度だけ行った海といえば、
茨城県下の、とある無名の海岸だったような記憶がある。
壊れたのガラス越しにファインダーを向けると、
遠い夏の日の思い出が、砂浜の貝殻を拾うように蘇ってくる。

海が誘うニッポンの地域差は、きっと来夏も縮まらないだろう。
そんな典型的な地が、茨城県の沿岸部にあるのだ。















*公共交通機関
常磐線勝田駅より「ひたちなか海浜鉄道」湊線 で約30分、
終点阿字ケ浦駅下車。海岸へは徒歩約7分。
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2012/11/14

鎮魂の町を歩く(vol.15-1) 水戸芸術館2「3.11とアーティスト|進行形の記録」Artists and the Disaster|Documentation in Progress

水戸芸術館で開催中の「3.11とアーティスト|進行形の記録」。
関連プログラム「wah documentトーク・アート被災地」の
2回目のイベントが、来る1118()に、
現代美術ギャラリー内ワークショップで開催される。
http://p.tl/0c-X

~宮城県石巻市の避難所で生活する子どもたちと、
段ボールで実現させた「こども映画館」を紹介、
被災地における芸術活動についての思いが語られる~
















被災地でありながら、あまり報道されてこなかった茨城県。
水戸芸術館が、東日本大震災に関する企画を
継続して積極的に立案、発信する姿勢は出色といっていい。

1週間前は、あいにく日没後だった100mのアートタワーへ、
ガラス張りのエレベーターで内部構造を楽しみながら昇降して、
企画展3.11とアーティスト|進行形の記録」の会場を
再度クルージング、3.11の読み方について自分なりに思いを馳せた。

現実に起こったことを、ともすれば忘却しがちな私たち。

アート被災地」のトークイベントに参加しがてら、
三重らせんが空に向かって上昇していくタワーや
モンローウオーク階段をはじめ、随所に散りばめられた
建築美に触れるためにも、ぶらり水戸に出かけてみるのもいい。


















































◉水戸芸術館/ART TOWER MITO (設計:磯崎新アトリエ)
TEL. 029-227-8111
現代美術ギャラリー3.11とアーティスト :進行形の記録」
1013() 129()月曜休館
930分~18時(入場は1730分まで)
一般800円、65歳以上は無料

*公共交通機関
上野駅より常磐線で水戸駅下車 (特急スーパーひたち・
フレッシュひたちで約65分~85分。普通列車で約120)
水戸駅北口バスターミナル4~7番乗り場から約7分、
泉町1丁目下車、徒歩約2分、100mのタワーが目印です。
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